ももいろ
手伝いましょうか、という谷川にお礼と笑顔を残し、

加藤くんは去っていった。

片付けで忙しいだろうに、金鯱組のメンバーは入れ替わりたちかわり俺らにあいさつしにきてくれては、慌ただしく去っていった。



はぁ…。



「すげぇうれしいな」

「なぁ」

ポカーン。



谷川がボケーッと口をあけたまま言った。

「話し合い、明日だな」

太田はうなずいている。

俺も同意した。

だって今、俺ら、すげぇしか言えないよ。

「お、TKO。来てたのか!」

顔見知りのバンドが、打ち上げ誘ってくれたけど、

丁重にお断わりして、帰ることにした。

「また、顔出せよ!俺らもいくし」

「うん。ごめんな、またね」



はぁ…。



俺はライブハウス前で、ぼんやりしていた。

なんか…すげぇなと思って。



「司?」

聞き覚えのある女の声がした。

なんだよ、今俺は気持ちイイんだから邪魔しないでよ。

と思いながら振り向くと。


「…真由美?」


真由美は笑顔でかけよってきた。

「久しぶりね司!昨日のライブ、よかったよ!」

「ありがとう」

真由美は関係がなくなってからも、ライブには来てくれるし、顔を合わせた時は話してたけど、最近は話してなかったな。

「司は、相変わらず?」

真由美は上目遣いで俺を見た。

ライブは見にきてくれてるから、バンドの話ではないよね。

昔真由美は、なぜか俺の女関係を把握してた。

どんな情報網?

それでも面倒臭いこと言ってこなかったから、ダラダラ続いたわけなんだけど。

真由美は真由美でいろいろ漁ってたみたいだから、気にならなかったんだね。

「いーえ。おとなしくしてます」

「へぇ。ホントかなぁ?」

真由美は俺との距離を縮めた。

相変わらずストレートだね。

俺は頭の中にピンクの霧がかかったような気がした。

真由美なら面倒なことにならないし…

「ホントです。試してみる?」

真由美は腕を俺の腕にからませてきた。

「ふふっ、司はわかりやすくていいね」


そちらこそ。
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