ももいろ
久々に来たラブホテルで、俺は真由美とセックスしたことを、激しく後悔した。
こんなことなら、谷川にエロビデオ借りとけばよかったよ。
俺は、タバコをふかしている真由美に謝った。
「ごめん。俺、真由美ともうしない」
真由美は大人の女の顔で俺を見て言った。
「好きな人でもできた?」
「…なんで」
「だって司、してる時、ずーっと変な顔してた」
うっ。
そんなつもりはなかったけど。
「変な顔…」
「辛そうだったよ」
俺はこの時、心底思った。
女ってこえー。
確かに俺、辛くなった。
いや、体は気持ち良かったんだけどね?
なんか、サツキさんのこと考えて…
フクザツなかんじ。
俺は自分に言い聞かせるように言った。
「好きな人、できてないよ」
「あら、そう?」
「そう。大事だけど、好きじゃない」
そう、好きじゃない。
だって、好きと思ったら、サツキさんの仕事にまで口出ししちゃいそうだもん。
してる最中、真由美を見ながら思った。
サツキさんは、これ、仕事でいつもしてるんだよなぁって。
俺以外の男と…
て、いやいや、サツキさんには好きな男としてほしいわけであって、
別に俺がしたいわけでは…
ほら、仕事で好きでもない男としてるなら、仕事じゃない時くらいは…って
仕事で…してるんだよな…
あー!意味わからん!
バカ!俺バカ!
他の男に触らせたくないとか思う気?
そんなこと思っちゃダメ!
俺にそんな権利ない!
「あたしは、別にいいんだけどな」
真由美の声で俺は我に返った。
「ん?」
「司とは、相性イイから。他の女のこと考えながら抱かれても、構わないわよ」
…。
「真由美…アホ?」
真由美は目を見開いた。
「えっ!?」
「愛のないセックス、して楽しい?いい加減にしときなよ…って俺が言うのは変だけど。ごめんね真由美。じゃあね」
俺が先に部屋を出る時、真由美が、
「司にそんなこと言われるとはね」
と笑いながら言うのが聞こえてきた。