僕の魔法使い
ただひとつ残念なことがあったとしたら、掌に乗せられた飴玉を落としたら彼女の笑顔がなくなってしまいそうで、まりこの細い身体を抱きしめてやれなかったことだろう。
確かに僕は幸せだった。
それはもうどうしようもなく。溢れそうになる幸せを僕はいつだって一生懸命すくいつづけていた。
だから、だろうか。今僕はこんなにも悲しいのはそのつけだとでも言うのだろうか。
僕の魔法使いは、いなくなってしまったのだ。
この、幸せな帰り道を境に。
僕に魔法のキャンディだけを残して。
彼女はいなくなってしまった。
それがまたまるで漫画のようにできすぎていて、僕は泣くこともできなかった。