TIME
「暗くなったな」


俺達がカラオケに入って
里田が満足するまで歌って
時間はもう何時か分からなくなってしまった。


「てか俺の金でよくそんなに歌えるなお前」


満足そうな里田に向かって少し皮肉を込めて言ってみる。


「だってお前あんまり曲入れないから俺が入れるしかないだろ?」


俺は失笑した。コイツには何を言っても無駄だ



しかしそんな俺の顔を見て里田は宝物を見つけたこどもの様な顔をした




「お前笑ってる!やっと笑ったか!」


いやこれは呆れてるんだけど


「いや、良かった今日は良く眠れそうだ!」



里田はそう言って自転車にまたがる。


「じゃあな守中!また明日!」



呆気にとられていると里田は行ってしまった。


「おい、里田…」


里田は嬉しそうに帰って行った

「あれだけ熱唱してたら誰でも疲れてすぐ寝ちまうだろ」


そう独り言をぼやく俺を
カラオケから出てきた違う学校の制服を着た女の子達が少し白い目で見ていた。



俺は恥ずかしくなって急いで自転車にまたりその場から逃げるように立ち去った。





しばらく自転車を走らせて左手を見て時刻を確認しようとして初めて気付いた。








「…そういうば体育の時外したままだっけ」


今から学校に向かうのも面倒だ、明日でいいだろう。





俺は自転車のペダルを踏み込んだ。



その日のペダルはなぜだとても軽く感じた。
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