TIME
向こうも驚いている。それはそうだ。

俺も驚いている。今まで誰も居なかったから余計に。

そして俺はその人を知っているけど親しくはない事をすっかり忘れていた。


「…八城さん?」

「…守中君?」


しかし、それだけ言っても何もならない。つまり話しかけたら次に言うことを考えるべきなのだろうけど、



それが浮かばない


「こんな時間にどうしたの?」

「バイト。」


さて、どうしたのはこちらのセリフだけど次にどうしたらいいんだろ。


なんで話しかけたんだっけ?



そうか、思い出した。

「ここ…痴漢注意場所だぞ」


俺はさっき通り過ぎた看板を指さした。その看板には

痴漢注意!

とでかく書かれていた。

すると八城はその看板まで歩いてまじまじと看板を見て言った。
「知らなかった、初めて来たから」


「だから早く帰れよ」

「え?送ってってよ」

「え?」

「だって危ないんでしょ?」

俺はため息を吐き出して乗れよと言って自転車の荷台に八城を乗せて走り出した。


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