蜜林檎 *Ⅱ*
空き地に、車が何台か停められ
ているその場所に、杏に
案内されて車を駐車させる樹。
 
「ここ、誰かの私有地だよね
 勝手に、車を停めて・・・」

「大丈夫だよ」

この土地は、雅也の悪友、伊藤
の所有する土地で店に来る
お客様用に、駐車場として
使っていいと許可をもらって
いるが

店に来るのは、常連の近所の人
ばかりで、いつの間にか伊藤の
所有する車以外は雅也の車
真の車と、身内だけしか
使っていないのだった。
   
「ここから家まで、近道しても
 少し歩くから、念の為に
 サングラスをしてた方が
 いいかも」

清々しい朝の空気を吸いながら
二人は手を繋いで歩く。
   
樹は遠い昔に見た町並みを
とても懐かしく思う。

家の前に立ち、杏はドアに
手を翳し、深呼吸をする。
 
昨日の出来事を、きっと雅也は
怒っているはず。
 
・・杏の胃は、キリキリと痛む
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