蜜林檎 *Ⅱ*
「お父さん、ただいま・・・」

「アンちゃん・・・」

杏の声に気がつき、玄関へ
走って来た菜那は黒い服を着た
サングラス姿の見知らぬ男の人
に戸惑う。
   
樹は、さっとサングラスを外し
しゃがんで菜那と目線を合わせ
て、微笑んでみせた。

「おはよう、ナナちゃん
 はじめまして」

「あっ、アンちゃんの
 おへやのひと~
 
 おじいちゃん
 アンちゃんの
 おへやのひとがいるよ」

菜那の『お部屋の人』・・・
と言う意味が何なのか?
 
とても気になる樹が、杏を
見つめると彼女は何も
言わずに笑っている。
 
菜那に手を引かれ、玄関に
出て来た雅也は樹の姿に驚く。
   
「おう、イッキ
 おまえも来てくれたのか?
 ありがとう、助かるよ

 すまないがしばらくの間
 ナナの世話を宜しく頼むよ」
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