蜜林檎 *Ⅱ*
「わたし
 おおきくなったら
 
 イッキの
 おかあさんになる」

きっと、菜那はお嫁さんになる
と言いたかったに違いない。
 
樹もその間違いにすぐ気づいて
いたが、小さな菜那の言葉が
樹の胸に優しく響いた。

「ありがとう
 とっても、うれしいよ」

昼食を済ませ14時を過ぎても
真からは何の連絡も無い。

雅也も会合から戻って来ない。
 
家に居る事に飽きてしまった
菜那を連れて、すぐ近所の
公園へ出向く。

砂場で、遊ぶ菜那を
見つめる二人。

菜那が怖がるのでサングラスを
外している樹は、真に借りた
キャップを深く被る。

「誰もいなくてよかったわ
 こんな所を、ファンに
 見られたら
 すごい騒ぎになっちゃう・・・
 
 イツキに隠し子発覚・・・」

杏の言葉に続けて、樹は雑誌の
スクープタイトルを言う。

「幼い女児、妻と共に白昼
 公園で家族サービス
 ・・・とか?」
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