蜜林檎 *Ⅱ*
みんなの笑い合う声が
病室の外、廊下まで聞こえる。

「ユリちゃん、明日
 また顔出すね」

「いいの、ありがとう
 待ってるね」

「それから、お店の事は
 心配しないで・・・
 ユリちゃんが産後
 ゆっくりして
 動けるようになるまで
 
 私がこの間みたいに
 出来る時はなるべく
 手伝うようにするから」

杏の言葉に、百合だけでなく
雅也もホッとするのだった。

「アン、ありがとう」

「すまないな、アン、頼むよ」

雅也の声が、杏の胸に届く。

病院を出て車に乗車する杏
樹の携帯電話が鳴る。

「サクちゃんからだ・・・」

「イッキ、早く出てやれ」

電話に出た樹が話す前に、電話
から朔夜の大きな声が洩れる。

「イッキ、今日空いてる?
 アンズちゃんも一緒に
 飲みに行こうよ
   
 聞いてる、イッキ・・・?」
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