蜜林檎 *Ⅱ*
彼女は、ここで生活を
送っていた。
 
もっと女の子っぽい、甘い部屋
を想像したが思ったよりも
さっぱりとした雰囲気の色合い
に心は落ち着き、とても居心地
がいい。

ドアを閉めた樹は驚き、そして
微笑む。

やっと今、菜那が言った

『お部屋の人』

の意味が分かった。

ドアに貼られた、自分の姿・・

飾られたサインにドレス・・・

ラックに並べられた『moment』
のCD、DVD、写真集
音楽雑誌などを見つめる。

杏の机に置かれたある物を
手に取る。

「こんな、古いのまで
 持ってるんだ
 よく手に入った・・・
 これは・・・」

樹が手にしたのは
デビュー当初の貴重な
レコードだった。
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