蜜林檎 *Ⅱ*
「ごめんなさい、お父さん
 私はもう、この家に戻る
 つもりはないの
 イツキの傍に居たいから
 彼と一緒に暮らします
   
 お父さんの反対を押しきって
 この家を出て行く
 私を許してほしいなんて
 とても言えません
   
 ただ、親不孝な娘で
 ごめんなさい・・・」

ただ愛する人の傍に居たいと
願う娘の気持ちに答えてあげる
事ができない、雅也・・・
 
遣る瀬無い思いが駆け巡る。

「お店の手伝いは、できるだけ
 の事はするから仕事で無理な
 時は、早めに連絡入れるね
   
 ただ、終電には必ず乗りたい
 から、後片付けはできない
 かもしれない・・・
 それでもいいかな」

「すまないな、アン
 でも終電までいる必要は無い
 無理な時はいつでも電話しろ
   
 俺とシンとで、何とかやって
 行くからな」

百合が産後、無理しないように
ゆっくりと過ごせる環境を
整えてあげなくては・・・

杏は、樹の待つ部屋へ戻る。
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