蜜林檎 *Ⅱ*
「ユリが死にものぐるいで
 作り上げた者を失った
 あの時の悲しみ
 悔しい気持ち・・・
   
 傍にいても何の役にも
 たってやれなかった 
 親としての不甲斐なさ
 ・・・俺は忘れられない」

「お父さん、ユリちゃんに
 何があったの?」

「もう
 終わったことなのに・・・
   
 お父さんはいつまでも
 気にしてくれていたのね
 ありがとう」

「終わったことなんて言うな
 ・・・言うな」

雅也の声が室内に響き渡り

言葉は詰まる・・・

これ以上は、話しては
いけない。
 
百合の瞳から涙が零れ
落ちるのを見た杏は
何も、聞けなくなる。
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