蜜林檎 *Ⅱ*
雅也の手を離れ、菜那は樹の元
へ駆け寄り、樹の足元に
抱きつき、お願い事を言う。

「イッキ、だっこして」

「いいよ」

樹に抱っこされた菜那は
得意気。

「ナナ、お外で遊ぼうか」

杏の言葉に喜ぶ菜那の声は
院内に響き渡り
 
そんな上機嫌な妹の姿を
笑って見つめる烈がいた。
 
烈は、ゆっくりと

樹の方へ歩み寄る。

何ともいえない張り詰めた空気
が、辺りに広がる。

烈の行動が気になる百合。

授乳をする為に看護士さんに
呼ばれて、室内へ入って行く。

烈から、目線を逸らす樹。
 
「レツ、学校は・・・?」

「今、試験中なんだ」
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