蜜林檎 *Ⅱ*
「イツキ・・・
 今日はごめんね
 
 これから
 仕事なんでしょう?」

「ああ・・・
 雑誌の取材だけだから
 すぐに終わるよ」

駐車場の前で杏の足が止まる。

彼女は見上げて言う。

「今夜、イツキの家に
 行っちゃ駄目かな?」

嬉しいと思う樹の心に
雅也の言葉がこだまする。

『俺の見てないところで
 勝手にやってくれ・・・』

樹は杏に答えることなく
黙ってしまう。

「あっ、そうだ私
 これからルリと会う約束
 忘れてたぁ・・・
 また、時間がある時に
 連絡してね」

「わかった・・・
 それじゃ、ルリちゃんに
 宜しくと伝えて」
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