蜜林檎 *Ⅱ*

杏の指に輝く指輪を見つめて
百合はある事を思い出した。

「私が受け取らなかった
　指輪は、今・・・」
　
百合は、ついつまらない話を
してしまったと話を逸らす
のだった。

「そうだ、この間・・・」

「ユリちゃん、イツキは
　きっと今でも、指輪は捨てず
　に持っていると思うよ」

「そうね
　・・・・・・
　それよりも、アン
　この間、ルリちゃんに
　付き添ってもらって
　ソウちゃんと会って話して
　来たんでしょう？」

蒼一と会って、樹と結婚する事
を正直に話した杏に、彼は
心から喜んでくれた。
　
そして、自己中心的な愛で
杏を縛ってしまった事を
謝ってくれたのだった。
　
杏もまた、自分の行いの全てを
蒼一に謝った。
　
間に入ってくれた瑠璃子の
おかげで二人はまた、友達に
戻ることができたのだった。

店を手伝う杏に、雅也は言う。

「今日も
　イッキの帰りは遅いのか？」