蜜林檎 *Ⅱ*
まりあは、その場に

しゃがみ込み言う。

「アンズちゃんだけは、やめて
 
 昔の彼女の妹なんでしょう」

「マリア、どうして・・・?」

「イッキの胸の中に、ずっと
 居続けたあの子の、いもうと
 私は、ずっと虚しかった
 あなたと、どれだけ愛を
 交わしても、イッキの中には
 ずっと、あの子がいた
   
 ねぇ、他の子なら
 誰でもいいから・・・
 
 あの子だけはやめて」

まりあの中で、樹の心を
奪って離さない

百合の存在は大きく

百合の妹である杏にだけは

樹を、絶対に捕られたくない。

差し出す樹の手に触れ
頬を寄せるまりあ
  
彼女もまた、樹を

愛するが故に

傷ついた人。
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