蜜林檎 *Ⅱ*
その時、まりあのダイヤのピアス
が片方、車に落ちた。

「私の気持ちは変わらない」 

樹は、車を降りて歩いて行く
まりあの後姿を見つめた後
自宅へと車を走らせた。

その光景の全てを、偶然に見て
しまった鏡子は、二人が縒りを
戻したのだと勘違いしてしまう。

「マリア
 イッキと一緒だったの
 なんだぁ、二人
 また縒りを戻したんだね」

「キョウコ、ちが・・・」

鏡子は、まりあの話を聞かない
まま、二人が縒りを戻したと
思い込み心から喜ぶのだった。
  
まりあもまた、そんな鏡子の
誤解を解かないまま
泊めてほしいという彼女と共に
部屋へと入って行く。

この、たったひとつの誤解に
深く傷つく人がいる。

杏は、今、どんな夢を見る。
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