蜜林檎 *Ⅱ*
杏は、その事は
ちゃんと理解していた。
 
樹に逢えない事はとても寂しい
けれど、彼を待っている全国の
ファンの人達の事を思うと
そんな寂しさぐらい
我慢しなくちゃいけない。

「そうだ、バイト休みとって
 アヤメちゃんと一緒に
 地方に着いて行けば
 いいんじゃないの
   
 この際、バイト
 辞めちゃってもいいじゃない
 
 ツアーが終われば、イツキと
 結婚するんだし・・・」

杏は、結婚しても当分は
バイトは続けるつもりでいた。

「任される仕事も増えて来たし
 可愛い雑貨に囲まれてるの
 私好きなんだぁ」
  
瑠璃子と、たっぷりと
楽しい時を過ごした杏。

「あそこのパスタ
 いつ食べても美味しいよね」

「うん、お腹、いっぱいに
 なったしワインも飲んで
 気分も最高
   
 アン、こんなに遅くなって
 イツキ、心配してるんじゃ
 ない?」
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