蜜林檎 *Ⅱ*
たくさんの

ファンの人達の為に。

彼の為に。

樹の前では、明るく
いつもの陽気な杏でいたが
本当の杏は、寂しい気持ち
でいっぱいだった。
 
今までは、ファンという
立場で、彼に会える日を
今か今かと待ちわび
迎え入れて来た。

しかし今回、初めて
彼を送り出さなくてはいけない

全く会えない訳ではない

月の初めの数日間は一緒に
過ごす事はできるし
比較的、都心に近い場所で
行う場合は、家に帰る事も
可能ではある。

その事は、充分に理解していた
のに、いざ、この時が来ると
寂しい気持ちで、胸がいっぱい
になる。
 
ほんの僅かな時間でも

毎日、樹の顔を見て

彼に触れたい。
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