蜜林檎 *Ⅱ*
逢えない夜を一人で過ごすのは
とても寂しい。

いつかは、慣れる時が
来るのだろう・・・
 
でも今は、とても無理だ。 
  
けれど杏は、その想いを胸の奥
に閉じ込めて笑って元気に言う

「イツキ、いってらっしゃい」

樹は、杏の寂しさに
気づいていた。
 
彼女は、笑ってはいるものの
瞳だけは泣いている。
 
その瞳を見つめて、樹は告げる

「戻れる時は、なるべく
 帰るようにするよ」
   
杏は首を、左右に振る。

「イツキ、無理しなくていいよ
 今はツアーが、ちゃんと順調
 に進んで行く事だけを考えて
 いつものように行動して・・
 ライブのひとつ、ひとつ
 を大切にしてね」

「ああ、ファンのみんなに
 最高のものを届けられる
 ように、俺達の全てを
 出し切るよ・・・
 じゃあ、行ってきます」

樹は、杏を強く抱きしめた後
息もできない程、熱い口づけ
を交わす。
 
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