蜜林檎 *Ⅱ*
「ただいま」
 
「・・・」

音の無い室内

静かに流れる時間。

樹は荷物を持ちリビングのドア
を開けた。
 
テーブルの上に重ねて置かれた
数本のDVD。
 
作品を手にとった樹は、恋愛
もののタイトルに微笑んだ。
 
そのタイトルはどれも、杏の
今の想いを代弁しているかの
ようなものばかりで、樹に
向けての杏の想いが感じとれた

寝室のドアをそっと開けた樹は
ベッドに眠る杏を見つけた。
 
可愛い寝顔を見つめながら
樹はある事に気がつく。
 
杏はいつも必ず樹に背を向けて
右側を向いて眠る。
 
そんな彼女が左側を向き
ベッドの余白に右腕を
伸ばして眠っている。
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