蜜林檎 *Ⅱ*
雅也は、杏にかける言葉が
みつからない。

『許す』・・・

そう一言、言ってさえあげれば
杏の不安は無くなる・・・

しかし雅也はどうしても
その言葉が言えない。

杏は心ここに有らずのままに
時間が過ぎる。 
 
店の営業時間が終わりに
差し掛かった時、店のドアが
開くのを、杏はただ、ぼーっと
見つめていた。
 
その見つめた先に

愛しい人が立つ・・・

「どうして?・・・イツキ」

驚く杏の前に歩み寄り
樹は彼女の手を取る。
 
そして、雅也をまっすぐに
見つめて、彼は言う。

「親父さん
 今日は、杏をお借りします
 隠れてこそこそ逢うのは
 性に合わない」
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