蜜林檎 *Ⅱ*
樹は、帰って来たままの姿で
杏を起こさないように
そっとベッドに横になり
彼女の右腕を自分の腰に置いた
 
そして、そっと杏を包み
彼女の髪を撫でた。

杏は、触れる存在

感じる体温、息遣い・・・
 
そして樹の香りに気がつき
彼の背中に腕をまわした。
 
「おかえり、イツキ」

「ただいま」

二人は束の間、ベッドで会話
を楽しんだ。

杏は、着替えている樹の脱いだ
服を集める。
   
「じゃあ、皆はまだ・・・」

東京へ帰る関係者に同行させて
もらい樹だけが一足先に
帰って来ていたのだった。

「昨夜の打ち上げで、みんな
 相当飲んでるからゆっくり
 帰ってくるんじゃないかな」

杏は樹の話を聞きながら手元は
キャリーバックから洗濯物を
出して、家で洗うものと
クリーニングに出すものに
分類している。

「ありがとう、杏」

< 180 / 275 >

この作品をシェア

pagetop