蜜林檎 *Ⅱ*
食事を済ませた二人は車を突堤
に停めて夜風にあたっていた。

「イツキ、気持ちがいいね」

「ああ」
 
杏の長い髪が風に靡いて
とても綺麗で、樹は
その髪に手を伸ばし触れた。

自宅の近くまで帰ってきた時
車のフロントガラスに、ポツリ
と一粒の雨が落ちた。

雨が降り出す。

「洗濯物が濡れちゃう
 イツキ、入り口付近で
 降ろしてくれる?
 先に上がって取り込み
 たいから」

「いいよ」

自宅のマンションの前
ドアを開けて降りる杏は
さっき立ち寄った、コンビニ
の袋が足元に置いてある事に
気がつき、手を伸ばした。

その時、建物の明かりを受けて
あの日と同じピアスが輝く。

杏は、動けない・・・

雨が、彼女を濡らす。
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