蜜林檎 *Ⅱ*
樹の返答に、杏は驚かなかった
  
何となく、彼女の物では
無いかと思っていた。  
 
「やっぱり・・・二人は
 まだ続いていたの?」

杏のその言葉を受けて
樹は、少し強い口調で話す。

「杏、俺を見ろ」
 
杏は、樹の瞳を真っ直ぐに
見つめた。

「マリアを一度だけ、車に
 乗せて彼女の家まで送って
 行った事があるんだ
 その時に、両親からもらった
 大切なピアスを片方
 落としたかもしれないと
 彼女から後で聞いて
 俺達は、車内を探したけれど
 見つからなかった
 それが、あのピアスだよ」
   
片方だけ落としたピアスが
何故、この家に両方あるの?
  
「マリアを車に乗せたのは
 その一度だけで
 
 俺達は、もうずっと以前に
 別れている」

一度だけ・・・
< 184 / 275 >

この作品をシェア

pagetop