蜜林檎 *Ⅱ*
樹を不安にさせたまま
送り出してはいけない。

『イツキと
 このままの状態で
 離れるなんて嫌だ』

杏は、洗面台で顔を洗い
タオルで拭いている
樹の背中に強く抱きついた。

「ごめんなさい、イツキ」

驚いて、振り返った樹は
杏の瞳を見つめて
照れながら言う。

「俺も、ごめん」

杏は、樹の肩に腕を回し
二人は抱きしめあい
口づけを交わした。

出掛ける用意をする樹の傍で
今夜のライブの事を話す二人。

「今日は、ユリは来るの?」

「ううん、今日は
 ルリと私だけだよ
 ユリちゃんは明日」
 
「そうか、明日・・・
 ユリが来ると思うと
 変に緊張する」

「イツキでも
 緊張なんてするの?」
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