蜜林檎 *Ⅱ*
百合は、会場内の御手洗いへと
歩いて行く。
  
その後姿を見つめて、あやめは
言う。

「アンちゃんのお姉さん
 うちのお姉ちゃんと
 同い年ぐらいだよね
 二人のお子さんがいるよう
 には、とても見えない
 
 そうだ、ライブの後
 打ち上げには参加する?
 姉に連れて行って
 もらえるんだけど」

「私は、楽屋にだけ挨拶して
 今日はユリちゃんと一緒に
 帰るわ、ルリは
 せっかくだし打ち上げに
 参加しておいでよ」   

御手洗いへ向った百合は
列に並んでいた。
  
鏡の前に立ち、口紅を直す
まりあは、鏡越しに
百合の姿を見つけて息を呑む。
  
樹の愛を独占して離さない彼女
が今、そこに存在する。
 
御手洗いの外、百合が出てくる
のを待つ、まりあ。
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