蜜林檎 *Ⅱ*
あの日、病院の前で
樹にプロポーズされて
一度は受け取った指輪。
  
「これは、貴女が
 イッキに返した指輪
 
 どうして、私が
 持っていると思う?」

まりあは、百合を真っ直ぐ
に見つめて言う。

「ユリさん、貴女を失って
 深い悲しみに嘆いたイッキが
 やっと立ち直って
 私に結婚を申し込んでくれた
 その時に渡してくれたのが
 この指輪」

百合から視線を外したまりあは
次に杏を見つめて言う。   

「今でも、その約束は
 私とイッキの心の中に
 確かにある」
 
杏は、酷く動揺する。
 
『アンズ
 俺とけっこんしてください』

まりあの瞳が、まりあの言葉が

杏の胸を鷲攫み、放さない。
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