蜜林檎 *Ⅱ*
百合は、杏の手を握り締める。

「アン、彼女の言葉に
 惑わされちゃいけない
 イッキの婚約者は誰でも
 無い貴女、杏
 ただ一人なのよ」

これから、この場所で
東京公演の成功を祝う
祝宴が始まるというのに・・・

『私は、ここにいれない・・』

喜びを分かち合う

そんな場所に・・・

『私は、居てはいけない
 ここに居れば
 イツキに聞いてしまう 
   
「貴方は、いったい
 誰を愛しているの?」だと』
  
この場所を離れようと、一歩を
踏み出す杏に、まりあは
続けて言う。

「私のもう一つのピアス
 アンズちゃん、貴女が
 持っているんでしょう?」

杏は、立ち止まる。

「マリアさん、貴女のピアスの
 片方を私は、偶然イツキの車
 で見つけた、そして家に
 持って帰ってしまった
 ・・・」
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