蜜林檎 *Ⅱ*
「それなのに、どうして
 また同じピアスが片方
 イツキの車に落ちていたの
 どうして?」

「それは
 そのままの意味でしょう
 私とイッキが何度も
 逢っていたという意味」
 
昨夜の鏡子の言葉が
また杏に聞こえる。

『イッキはマリアと
 また付き合い出したから
 今度こそ、二人は
 結婚すると思うわ』

杏の樹を信じる、信じたいと
思う気持ちが
   
音を立てて崩れていく・・・

「私は、ここにいれない」

走り出した杏を、百合は
追いかけ、強く抱きしめた。

「アン、彼女の言葉を
 鵜呑みにしちゃ駄目よ
 ちゃんとイッキに、全てを
 聞く方がいい
 彼がアンを裏切る訳が
 無いもの、ねえ、アン
 イッキを信じてあげよう」

杏の瞳から、涙が零れ落ちた。

「信じたいよ・・・だけど」
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