蜜林檎 *Ⅱ*
「ううん、このまま戻ったと
 しても私はきっと、また
 イツキを傷つけてしまう
   
 今は一人になって考えたい
 ルリ、ユリちゃんの事を
 よろしくね」

杏は一人、車を降りた。

タクシーは走り出し
百合の居る場所へと戻って行く

杏が、タクシーに乗車して
帰ったすぐ後
 
樹は、まりあの傍へ近寄り
彼女に問いかけた。

「マリア、杏に何を言った?」

そう問いかける樹の目は鋭く
まりあはこんなにも怒る樹の
表情を見たのは初めてで
体が震えて、何も言う事が
できない。

「イッキ」  

百合の声に、我にもどった樹は
握り締めた拳を解いた。

樹の行動に打ち上げに集まった
関係者や仲間、ファンの人達は
何が起こったのだろうと
戸惑っていた。

その場は、千里がうまくファン
同士の諍いがあったと
取り成して伝えたおかげで
何事も無かったようにライブの
成功を祝う宴は始まった。
< 202 / 275 >

この作品をシェア

pagetop