蜜林檎 *Ⅱ*
家に戻って来たのが、百合では
無く杏だった事に驚く雅也は
彼女の部屋をノックする。

「入るぞ」

組合員の人達と旅行に
出掛けているはずの雅也の存在に
驚く、杏。

「お父さん
 旅行はどうしたの?」

「急の腹痛で行くのを止めた
 ガキの頃から遠出する日は
 何故か、腹の具合が悪くなる
 ユリから聞いてないのか?」

「・・・・・・」

今日の杏は、百合の話など
ちゃんと聞いてはいなかった。

杏の真赤な瞳を見つめた雅也は
杏と樹の間に何かあった事に
気がつく。

「イッキと、何があったんだ?
 喧嘩したのか」

「お父さん、私、ここに
 戻って来てもいい?
 
 また、みんなと
 一緒に暮らしたい」

杏の思いも寄らない言葉に
雅也は驚いたが、彼の答えは
決まっていた。
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