蜜林檎 *Ⅱ*
雅也は、首を左右に振る。

「駄目だ、落ち着いたら
 イッキの元へ帰れ
 二人の間に、何があったかは
 知らないが、おまえの事だ
 イッキの話も聞かずに
 ここに戻って来たんだろう」

「お父さん、わたしはもう
 イツキには逢えないよ」

「いい加減にしろ」

雅也の怒鳴り声に、杏は驚く。
 
彼女の瞳から目を逸らさずに
雅也は言う。

「アン、お前まで
 イッキを棄てるのか?
   
 そして、自分だけ
 この場所に戻って来るのか?
   
 おまえに棄てられたアイツは
 どうなる・・・
   
 イッキの帰る場所は
 お前しかいないだろう」

『わたしが

 イツキをすてる・・・』
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