蜜林檎 *Ⅱ*
百合は席を立ち、戻って来た
瑠璃子のところへ駆け寄ると
その様子に気づいた樹も
お酒を飲みすぎてふらつく
足取りで、二人のところへと
歩み寄った。

「ルリちゃん
 ごめんなさいね
 それで、アンは?」

瑠璃子は、百合の後ろに
歩み寄る樹に聞こえるように
話し出す。
 
「アンは、今日は実家に
 帰りました
 一人になって、いろいろと
 考えたいそうです」

振り返る百合は樹を見つめた。

樹の表情は、暗く沈んでいく。

「ルリちゃん
 杏を、送り届けてくれて
 ありがとう」
 
樹は、そう言った後
その場を離れた。
 
彼の背中はとても寂しそうで
瑠璃子はつい、樹を呼び止めて
しまうのだった。

そして、言う。

「イツキさん、明日には
 必ず貴方のもとへ戻ると
 アンが言ってました」
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