蜜林檎 *Ⅱ*
自分の目を疑った樹は、眠る
杏の頬に触れた。

彼女の温もりに、樹は心から
嬉しいと思うのだった。

眠る彼女を、そっと両手で
抱き上げた樹は、そのまま
ベッドへと杏を連れて行く。

ベッドに優しく寝かされた
杏の瞳が、開いた。
 
杏が目覚めた事に気づかない
樹は彼女から離れようとした。
 
その腕を杏は掴む、そして
起き上がり、ベッドに座る。

「イツキ、ごめんなさい
 わたし、貴方にひどいことを
 言ってしまった
 ごめんね」

樹は杏の隣に腰を下ろし
彼女を強く抱きしめた。

「杏、戻って来てくれて
 ありがとう
 
 うれしいよ」

杏は樹の背中にきつく腕を回し
彼の胸に身を委ねて黙ったまま
彼の鼓動を聞いていた。
< 213 / 275 >

この作品をシェア

pagetop