蜜林檎 *Ⅱ*
「母親に棄てられた
 あの時のまま
 根元は何も変わっていない
 愛に飢えた、子どものまま
 ・・・
 杏、お願いだ
 おまえだけは、俺の傍にいて
 
 おまえの愛だけが
 俺は欲しくて堪らない
 
 おまえの愛があれば
 俺はそれだけで幸せになれる
 
 頼むから
 俺を棄てないでくれ」

杏は、樹の髪に優しく
触れながら、彼を見つめた。

『すてないで・・・』

見つめた視線の先に

小さな男の子が映る。
  
樹の瞳から、一粒の涙が流れた
  
杏は、樹の瞳に

優しいキスをした。
  
「イツキ、私は絶対に貴方を
 棄てたりしないよ
 だって、貴方がいないと
 私は生きていけない」

「杏、愛している
 
 俺の愛を全部
  
 おまえにあげる」

二人は、何度も口づけを
交わして
  
手を取り合って、眠りにつく。
< 215 / 275 >

この作品をシェア

pagetop