蜜林檎 *Ⅱ*
何時間眠っただろう、ベッド
には樹の姿は無い。
  
目を覚ました杏は、起き上がり
寝室のドアを開けた。
  
樹の姿を探すと彼は、ベランダ
に出て曇り空の下で煙草を
吸っていた。

杏は、まりあのピアスを
手に持ち

樹におはようの挨拶をした。
  
「おはよう、杏」

「イツキ、貴方の車で私
 このピアスを見つめたの」

杏の掌に置かれたまりあの
ピアスに驚く樹。

「それは、マリアのピアス
 どうして、ここに?」

杏は、経緯の全てを樹に
話して聞かせた。

「もう
 取り乱したりしないから
 正直に答えて、マリアさん
 とは何度も逢っていたの?」

樹は、首を左右に振った。

「逢っていないよ、どうして
 車に、もう片方のピアスが
 落ちていたのか、俺にも
 分からないけど・・・
 一度だけ、彼女を乗せた事は
 事実で、その時にピアスを
 落としたと、マリアは
 言っていた
 
 車の中を二人で探した時
 彼女は確かにこのピアスを
 付けていたはず・・・
 どうして・・・?」
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