蜜林檎 *Ⅱ*
「ああ、マリアには悪いけど
 杏に逢うまで、俺は
 百合以外、誰とも
 結婚を考えた事は無い」

灰皿に煙草を押し付けながら
樹は言う。

「俺が全て悪いんだ
 マリアの気持ちを受け入れて
 やれないくせに、彼女に
 手を出した
 アイツが寂しさから、他の男
 に走った時も、俺は
 マリアを責めなかった
 男に裏切られて帰って来た時
 も何も言わずに受け入れた
 そんな事をダラダラと続けた
 マリアが、ユリの妹である杏
 と俺が付き合うことを
 許せない気持ちも分かる」

「イツキ・・・」

「だけど、俺の想いは
 
 もう止められない」

杏を抱き寄せて、樹は囁く。

「おまえがいないと
 
 俺は俺でいられなくなる」
     
杏は、もう十分だった。

樹の愛は、ここにある。

そして、その大きな愛で
優しく包んでくれる。
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