蜜林檎 *Ⅱ*
翌日杏は、以前のように
涙を流す事は無く心から
笑って、樹を見送った。

「いってらっしゃい
 ツアー、楽しんで来てね」

ドアの前に立ち、微笑んで
手を振る杏をよそに
樹は、胸騒ぎを覚えた。

樹は、杏に駆け寄って
彼女を強く抱きしめた。

「どうしたの?イツキ」

樹は、もう二度と杏に
逢えないような気がした。

その四日後

仕事中、杏の携帯電話の
着信音が鳴り響く。

「もしもし・・・」

杏の顔色は、見る見る
うちに青褪めていく。

それは、樹の事故を
知らせる内容の
電話だった。
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