蜜林檎 *Ⅱ*
雅也は、その場にしゃがんで
杏を強く抱きしめた。

「手術は成功したんだ
 大丈夫だよ 
 
 アイツがおまえを置いて行く
 わけが無いだろう」

「お母さんは、私を置いて
 行っちゃったよ」

杏の頭の中は錯乱状態で
自分が今、何を話しているのか
さえ、分からない。

「アン、社長さんが貴女と
 話がしたいって、大丈夫
 歩ける?
 お父さんも私も、一緒に
 居るからね」

人気の無い待合室の片隅で
話をする。

「はじめまして、事務所の社長
 の真野です
 佐伯 杏さんですね
 イッキから話は聞いています
      
 早速ですが、イッキの怪我の
 状態ですが、胸骨骨折
 肋骨骨折が4本、肺挫傷
 後は、軽い外傷に打撲が
 数箇所・・・」
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