蜜林檎 *Ⅱ*
その涙は、もう止まらない。
    
樹は、痛む体を起こして
ベッドに座ろうとした。
    
百合が樹に、さっと手を貸す。
 
「イッキ、無理しちゃ駄目よ」

「大丈夫だよ、杏、おいで」

手の平で涙を拭った杏は

そっと樹に触れ

彼の胸に頬を寄せた。

病室の外へ出て行く
百合と雅也。

樹の鼓動が、ちゃんと聞こえる
    
樹は、生きている。
    
「ごめん、杏」

杏は、樹の包帯にそっと触れた

「痛い・・・」

さっきまで泣いていた杏・・・

今度は、勝ち誇った顔で
樹に問いかける。

「降参する?」

「降参します」

病室の外、聞こえてくる杏の
笑い声に百合と雅也は
ホッと安堵するのだった。
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