蜜林檎 *Ⅱ*
「ユリは昨夜、イッキが
 あのまま目覚めないかも
 しれないと、そう思い
 レツに本当の事を話す事を
 決めたんだ」

「じゃあ、レツはもう?」

「昨夜の電話で、言うか
 言わないかは、最終的には
 ユウジに任せる事にした
 らしい
 ユウジがレツに、イッキが
 本当の父親だと話せば
 何かしら、トラブルが
 起こるかもしれない
 
 それでも、レツに本当の父親
 のことを知らせる義務が
 ユリにはあったんだ
 その事を、アンやイッキに
 黙って勝手にしてしまった事
 を、ユリは今
 とても後悔している」

杏には、百合の思いが
痛い程に分かる。

「ユリちゃんは何も後悔する事
 なんて無いよ
 レツには、真実を知る
 権利がある」
 
杏は、窓の外を流れる景色を
見つめた。

そして、携帯を手に瑠璃子に
電話をかけるのだった。

杏を心配する瑠璃子の声が
運転中の雅也にまで聞こえた。
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