蜜林檎 *Ⅱ*
「ありがとう」

「そちらの方は
 どちらさまですか?」

「イツキさんのお母様なの
 こちらで少し
 待っていてください」

病室のドアを開けようとした
杏の手に、スタッフが触れる。

「アンズさん
 ちょっとこちらへ」

二人は、その場を離れる。
 
「アンズさん、困ります
 イッキさん、ご本人が
 お母様にお会いになる事を
 拒否していらっしゃるんです
    
 事故の後、度々、事務所に
 母だと言う方からのお電話が
 あったので
 社長が、イッキさんに会うか
 どうか聞いてみましたところ
 彼は、会いたくないと
 話しています
    
 だから事務所側は、ここに
 彼が入院していることを
 その方には
 お教えしていません」
 
「そんな・・・
 イツキが拒否してるなんて」
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