蜜林檎 *Ⅱ*
「母さん
 会いに来てくれてありがとう
 嬉しいよ」

杏は、寄りそう二人を見つめた

許すとか許さないとか

そんな事じゃない。
    
頭で考えるよりも

心で感じるものなのだ。

二度と会いたくない・・・

その思いは、もう一度会いたい
に変わる時がくるかもしれない

帰る母親を呼び止めた樹は
杏の手を掴んで言う。

「母さん、俺
 彼女と結婚するんだ
 式には、ぜひ出席してよ」

母親は満面の笑みを浮かべ
手を振り、帰って行った。

病室で二人きり・・・

さっき買って来た
蜜入り林檎の皮を剥く
杏は、食べやすい大きさに
カットしてお皿にのせる。
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