蜜林檎 *Ⅱ*
「髪、伸びたね、それに
 少し痩せた
 昔のイツキみたい」

「ツアーに入ってから、一度も
 切ってないからな
 伸び放題で、ボサボサだな」

「ううん、そんなこと無いよ
 すごく似合ってる」

見つめる樹の姿に、杏は
胸の鼓動がドキドキと早くなる
のを感じたが、イツキから
目を逸らし、彼のシャツを
手に取った。

樹は、胸部の固定帯を取り
裸の胸に巻いた。

「イツキ、シャツは・・・?」

樹は、杏を抱き寄せて

口づけを交わした。
 
「だめだよ、イツキ
 
 胸が痛むよ」

樹は杏の手を取り、自分の心臓
にそっと触れさせた。
   
「もう既に

 こんなにも痛い」
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