蜜林檎 *Ⅱ*
固定帯の上から

そっと触れた樹の心臓は
  
激しく波打ち

杏の胸の鼓動と重なる。

二人は、同じ気持ち・・・

あなたを

もっと近くに感じたい

あなたに、触れたい

あなたを、愛したい

「イツキ、イツキ」

愛しい人の甘い声が

耳に優しく聞こえる。

彼の息吹を近くで感じながら

彼が生きていてくれた事に
  
心からの喜びを。

その嬉しい気持ちが

一粒の涙になり
  
抱き合う樹の肩に

そっと落ちた。
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