蜜林檎 *Ⅱ*
きっと母は
罪悪感に苛まれながら
自分を責め苦しんだはずだ。
 
そんな母の葛藤を、何ひとつ
知りもしない、この私が

母の事を嫌い、母と父の間に
生まれた自分の存在を
汚くて醜いと思ってしまった。

『そんな、母のようには
 なりたくない』

そう、思ってしまった。
    
体の弱い母がどんな想いで
私を産んだのか・・・

今なら分かる。

それは、父を愛していたから。

そして、私を愛していたから。

私は、母に心から言いたい。

『ママ

 私を産んでくれて

 ありがとう』

杏の左手薬指には、結婚指輪
が光る。
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