蜜林檎 *Ⅱ*
「でも、ああいう席では
 見る人が見たら
 短髪の方がいいかなって
   
 髪なんて
 また伸ばせばいいし・・・」

「そんなこと
 気にすること無いよ
 綺麗な黒髪だし
 イツキも
 気に入ってるでしょう?」
 
「まあ」
  
「イツキは
 イツキのままでいいよ
 そのままでいい」    
    
肩よりも少し長い髪を
オールバックにして結び
 
黒い光沢のある
ロングタキシードを都会的に
斬新に着こなした樹は
とても凛々しく惚れ惚れする
程にかっこいい。

彼に、一歩ずつ近づく度に
杏の胸の鼓動はドキドキと
高鳴る。 
   
樹の前で立ち止まる杏の
美しい姿に、彼は息を呑み
見惚れてしまう。

「イツキ」

杏の声にハッと気がつき
握手を求める雅也の手を
樹は、両手でしっかりと
握り締めた。

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