蜜林檎 *Ⅱ*
百合の涙を優しく拭う

真の姿があった。

「黙っていて、ごめんなさい」

「俺は、何の責任もとらずに
 今まで生きてきた・・・・・
 俺は、別れた後も、ユリに
 悲しい想いをさせ
  
 苦しめていた」

頭を抱え込む樹・・・
  
そこへ、杏が帰って来た。
  
のれんが出ていないお店の
ドアの外に立つ杏に雅也の
声が聞こえる。 

「杏とは、別れてくれ・・・
 俺たちと関わると
 おまえも苦しいだけだ
  
 杏には、これから
 話すつもりだ
  
 だから、どうか今日は
 もう帰ってくれないか」

樹は席を立ち、肩を落として
帰って行く。

お店から少し離れた場所で
杏はその後姿を見つめていた。
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