蜜林檎 *Ⅱ*
秘め事

頑なな心

『ねえ、イツキ

 貴方だけでいいよ』

それから、何も進展が無いまま
ひと月が過ぎ、樹達のイベント
参加も、大盛況のうちに
幕を閉じた。

杏は今回のライブを
観には行かなかった。

瑠璃子の仕事が多忙で都合が
つかないという理由。

又、樹と付き合っている事を
話して以来、雅也(父親)
とは、ぎぐしゃくした関係が
続いていて、家の中は
重苦しい空気が漂っていた。

杏は、とてもライブへ出かける
ような気持ちにはなれなかった

そして今日、とうとう

その日がやって来た。

杏と一緒に雅也の待つ

家へ向かう樹。
 
「イツキ、緊張してる?
 よね・・・」
 
「うん、親父さんに会うのは
 十五年ぶりぐらいだから」

杏は強く、樹の手を握りしめた
< 3 / 275 >

この作品をシェア

pagetop